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年上部下のマネジメントに悩むリーダーへ|「敬意」と「遠慮」を分け、役割で成果をつくる

2 日前
読了時間: 7分

「自分よりずっと長くこの仕事をしてきた人に、どう指示を出せばいいのか」 「改善してほしい点があるけれど、経験のある相手にどう切り出せばいいのか」

年上の部下を持つリーダーから、こうした声を聞くことは珍しくありません。当社の研修でも「年上に対するマネジメントはどうすればいいのか」という質問が寄せられており、多くの方が同じ場面で立ち止まっていることがうかがえます。


実際、ビズリーチが年収1,000万円以上の管理職経験者を対象に行った調査では、83.2%が年上の部下を持った経験があり、そのうち68.0%がマネジメントに悩んだ経験があると答えています。一方で、サイボウズの調査では、年上の部下がいるミドルマネージャーの76%が「仕事がやりやすい」と回答しています。年上部下は多くの職場にとって当たり前の存在であり、しかも「年上だから必ず難しい」わけではない。この二つの事実から、悩みの正体は年齢そのものとは別のところにあると考えられます。


前回のコラム「経験は終着点ではなく、次の出発点である ― ミドルシニア世代の再挑戦に寄せて」では、ミドルシニア世代自身の学び直しを取り上げました。今回はその続きとして、ベテラン人材と共に働くリーダーの側から、年上部下のマネジメントを考えます。


年上部下のマネジメントは「年齢差」ではなく、5つの要素に分けて考える



年上部下との関係がこじれる原因の多くは、年齢そのものではなく、いくつかの要素が一つに混ざってしまうことにあります。整理のために、次の5つに分けてみてください。


  • 経験:その業務に携わってきた年数や、見てきた場面の多さ

  • 専門性:特定の分野で持っている知識や技能

  • 役割:チームの中で、いま何を担う立場なのか

  • 期待成果:いつまでに、何を、どの水準で実現してほしいのか

  • 関係性:互いをどう見ているか、過去の経緯を含めた信頼の度合い


たとえば「経験では相手が上、役割では自分が上」という状態は、本来は矛盾しません。ところが、この区別が曖昧なまま接すると、「経験が上の人に指示をするのは失礼ではないか」という迷いが生まれます。


また、「年上だから頑固」「ベテランは変化を嫌う」といった見方で相手を捉えることも避けたいところです。前回のコラムでも触れたとおり、年齢に基づく思い込みは、本人の実態よりも周囲の側にあることが少なくありません。目の前の一人を、年齢ではなく、その人の経験・専門性・考え方で見ることが出発点になります。


敬意と遠慮を混同しない



年上部下への「敬意」は大切ですが、「遠慮」とは別のものです。敬意とは、相手の経験を尊重し、判断の材料として意見を求めることです。遠慮とは、言うべき依頼やフィードバックを避けてしまうことです。


遠慮が続くと、いくつかの問題が起こります。本人は改善の機会を得られず、自分がどう評価されているのかも分からないままになります。他のメンバーからは「あの人だけ扱いが違う」と見え、チームの公平感が揺らぎます。そしてリーダー自身が、本来は任せられる仕事まで抱え込んでしまいます。


言葉遣いを丁寧にすることと、伝える内容を薄めることは違います。敬意を持って、必要なことははっきり伝える。この両立が、年上部下にとってもリーダーにとっても、働きやすさにつながります。


「従ってもらう」ではなく、目的・役割・期待成果を言葉にする



年上部下との関係で目指したいのは、上下関係を認めてもらうことではなく、同じ目的に向かって役割を分担している状態です。そのために、面談や1on1では次の点を具体的に言葉にし、互いに合意しておくことをお勧めします。


  • チームとして、今期何を実現したいのか

  • その中で、相手に担ってほしい役割は何か

  • 期待する成果は何か(期限・水準・判断の基準)

  • リーダーである自分は何を引き受けるのか(最終判断、他部署との調整、必要な時間や予算の確保、評価の説明など)

  • 困ったときや意見が食い違ったとき、どのように相談するのか


特に4つ目が抜けやすい点です。相手に期待を伝えるだけでなく、上司として何に責任を持ち、どう支えるのかを示すことで、「指示される側」と「指示する側」ではなく、役割の違う協力者として向き合いやすくなります。


想定場面で考える:経験を成果につなげる伝え方



ここからは、よくある状況をもとにした想定場面を2つ紹介します。特定の企業の事例ではなく、伝え方をイメージしていただくための例です。


想定場面1:業務改善に、ベテランの知見を活かす


新しい受注管理の仕組みを導入する際、既存のやり方を長く担ってきたAさん(年上の部下)が、変更に慎重な姿勢を見せているとします。

リーダー:来月から新しい受注管理の仕組みを試験的に使います。今のやり方の強みも、抜けやすいポイントも一番よく知っているのはAさんなので、移行で見落としやすい確認項目を洗い出す役をお願いできませんか。今月末までに一覧にしていただければ、テスト計画に反映します。 Aさん:正直、仕組みを変える必要があるのか、まだ納得できていないんだけどね。 リーダー:その点もぜひ聞かせてください。目的は、入力の二重作業をなくして月末の締めを早めることです。懸念はテストで検証する項目に入れましょう。そのうえで、本格導入するかどうかは私が判断し、結果も説明します。

ここでは、相手の経験を「確認項目を洗い出す役割」として具体化し、期限と目的を示しています。反対意見を封じるのではなく検証に組み込み、最終判断の所在はリーダーが引き受けています。


想定場面2:技能継承をお願いしつつ、気になる点を伝える


顧客対応に定評のあるBさん(年上の部下)が、若手の質問に「見て覚えて」と返してしまう場面が続いているとします。

リーダー:Bさんの顧客対応は、問題が大きくなる前に収める判断が的確だと感じています。その判断の勘所を、若手にも使える形で残したいんです。一方で、先週○○さんが質問したときに「見て覚えて」で終わっていたのが気になりました。今期は、若手2名の同行指導をお願いできませんか。月に一度、どんな場面で何を判断したかを10分ほど共有していただけると助かります。 Bさん:教えるのは得意じゃないんだけどね。 リーダー:やり方はBさんがやりやすい形で構いません。そのための時間が取れるよう、担当案件の一部は私の方で調整します。

評価できる点と気になる点を具体的な事実で伝え、そのうえで新しい役割と頻度、上司側の支援をセットで示しています。


経営者が整えるべきこと:若手管理職の「個人技」に任せない



年上部下のマネジメントを、若手管理職の対人スキルだけに委ねるのには限界があります。組織として、次のような土台を整えることが欠かせません。


  • 役割と権限の明確化:管理職が何を決めてよいのか、ベテラン人材に何を任せるのかを明文化する

  • 評価の設計:技能継承や改善提案、後進の育成といった、ベテランならではの貢献が評価に反映される仕組みにする

  • 相談体制:管理職が一人で抱え込まないよう、上位者や人事に相談できる経路を用意する


当社では、ビジネスリーダーは役職と同義ではなく、一人ひとりがビジネスリーダーになり得ると考えています(参考:管理職でなくても、リーダーにはなれる ― 日本企業が見過ごしている「肩書きのない影響力」)。年上の部下もまた、役職とは別の形でチームを動かすリーダーになり得る存在です。その力を引き出せるかどうかは、個人の相性だけでなく、組織の設計にかかっています。


まとめ:年齢や肩書きの奥にある「特性」を見て、役割を設計する



年上部下のマネジメントで大切なのは、相手への敬意と、上司としての役割・期待成果の明確化を両立させることです。年齢による上下関係に意識を奪われず、共通の目的に向けて、それぞれの経験や強みを活かせる役割を設計する。それが、ベテラン人材の活躍と若手管理職の成長を同時に実現する道筋になります。


そのためには、年齢や肩書きだけでは見えない一人ひとりの特性を理解することが欠かせません。当社のESP診断は、人材の特性を可視化するための手がかりの一つです。診断結果をもとに対話を重ね、役割や育成の方針を検討していくことで、組織としての力を高めていくことを目指しています。


年上部下との関係づくりや、ベテラン人材と若手管理職がそれぞれの力を発揮できる役割設計にお悩みではありませんか。株式会社ビジネスプロデュースでは、ESP診断による人材特性の可視化を起点に、中核人材の選抜・育成と組織力強化を支援しています。自社の状況に合わせた進め方について、まずはお気軽にご相談ください。

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