管理職でなくても、リーダーにはなれる ― 日本企業が見過ごしている「肩書きのない影響力」
- 2 日前
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リーダーとは、役職のことだろうか
「うちのチームにはリーダーがいない」——そう嘆く経営者や管理職の声を、企業研修の現場でよく耳にします。ですが、よくよく話を聞いてみると、多くの場合それは「リーダー候補がいない」のではなく、「役職者以外の人が発揮している影響力に、誰も気づいていない」というケースです。
日本の職場には、「リーダー」という言葉を無意識のうちに「管理職」「役職者」と同義で使ってしまう習慣があります。課長、部長、マネージャー——そうした肩書きを持つ人だけが人を導く存在であり、その他の社員は「指示を受けて動く人」という前提です。
しかし実際の職場を観察すると、役職のない社員が周囲から自然に頼られ、場の空気を変え、チームの方向性に影響を与えている場面は決して珍しくありません。むしろ、そうした「肩書きのない影響力」にきちんと光を当てられている企業ほど、組織全体の力が強いように見えます。
今回は、「管理職ではない人のリーダーシップ」という、見過ごされがちなテーマについて考えてみたいと思います。
データが示す、日本企業の構造的な課題

働く人の意識調査を行う米ギャラップ社の最新の国際調査によると、日本で「仕事に熱意を持って取り組んでいる」と回答した従業員の割合はわずか8%にとどまり、東アジア平均の18%、世界平均の20%を大きく下回っています。この水準は一時的なものではなく、2009年に調査が始まって以来、日本の数値は一貫して4〜8%という低い水準で推移し続けています。
この数字を、「日本人は仕事への熱意が低い国民性だ」と読んでしまうのは早計です。むしろ注目すべきは、日本の職場が「役職者が方向性を示し、それ以外の人はそれに従う」という構造に強く依存してきた点です。人を導く役割が管理職という限られたポジションに集中しすぎると、組織の中に眠っている力の多くが活用されないまま埋もれてしまいます。
この点について、組織行動論の研究では「インフォーマル・リーダーシップ(公式な権限を持たないリーダーシップ)」という概念が長年議論されてきました。組織内で正式な権限や地位を持たないにもかかわらず、周囲から得た信頼と評判によって他者に影響を与え、導くことができる人材の存在は、以前から組織研究の分野で指摘されてきたテーマです。
さらに、こうした非公式なリーダーシップのあり方は、研究者によって「分散型」「創発的」「共有型」など複数の呼び方で説明されてきました。呼び名は異なっても、これらはいずれも、組織の中でリーダーシップが特定の役職者だけでなく複数の人々に分散して存在しうるという、共通した考え方を指しています。つまり、「役職がある人だけがリーダーである」という前提そのものが、経営学的にはすでに古い捉え方だということです。
「肩書きのない影響力」をどう活かすか
長年の企業研修を通じて出会ってきた方々の中には、役職としては一般社員でありながら、後輩から相談を持ちかけられ、部署をまたいだ調整役を自然に担い、チームの雰囲気そのものを支えている、という人が少なからずいらっしゃいます。
一方で、そうした人材の多くは、人事評価の枠組みの中では「頑張っている一般社員」として処理されてしまい、その影響力そのものが可視化されないままになっているケースが目立ちます。役職や年次を評価の唯一の物差しにしてしまうと、こうした「見えないリーダーシップ」を組織として認識し、育てる機会を逃してしまいます。
では、企業はどのような視点を持てばよいのでしょうか。いくつかの方向性が考えられます。
第一に、「頼られている人」を可視化する視点です。
誰が誰に相談しているか、誰の一言でチームの空気が変わるか——こうした関係性は、組織図には現れません。管理職が意識的に観察し、言葉にして本人に伝えるだけでも、その人の自己認識と行動は変わっていきます。
第二に、権限ではなく機会を委ねるという発想です。
役職を与えることだけがリーダーシップの機会ではありません。小さなプロジェクトの進行役、新人のフォロー役、部署間の橋渡し役——こうした「任される経験」の積み重ねが、肩書きに頼らない影響力を育てます。
第三に、心理的安全性のある場をつくることです。
役職がない人が発言し、行動を起こすには、それを受け止める土壌が必要です。上司が「役職者の意見が正しい」という前提で場を進めてしまうと、非公式なリーダーは声を上げにくくなります。
いずれも、大きな制度改革を必要とするものではありません。管理職一人ひとりの「見る目」と「任せ方」が変わるだけで、組織の中に埋もれていた力は少しずつ表に出てくるものです。
まとめ ― 日本企業には、まだ伸びしろがある
日本のエンゲージメントの低さは、しばしば「働く人のやる気の問題」として語られがちです。しかし、その根っこにあるのは、リーダーシップという役割を管理職という限られたポジションに集中させすぎてきた、組織構造そのものの問題ではないでしょうか。
裏を返せば、これは日本企業にとって大きな伸びしろでもあります。役職の有無にかかわらず、すでに周囲に良い影響を与えている人材は、決して少なくありません。それに気づき、光を当て、活躍の機会を用意すること——それだけで、組織の景色は変わっていきます。
管理職だけがリーダーではありません。肩書きの外側にある影響力に目を向けることから、日本の職場は、もう一段強くなれるはずです。



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