通年採用・第二新卒採用を始める前に、企業が整えたい5つのこと
変わる採用、これからの人材戦略|第2回

前回は、大手企業の「新卒一括採用の見直し」を、応募・選考時期、入社時期、応募対象、職務・配属の決め方、選考で評価するもの、の5つの要素に分けて整理しました。今回はその続きとして、実際に採用の時期や対象を広げようとするときの準備を考えます。
「通年で応募を受け付けたい」「第二新卒にも門戸を開きたい」と考えても、気になるのは「今の人員体制で本当に回せるのか」という点ではないでしょうか。採用の機会を増やすには、募集の窓口を広げるだけでなく、一貫した選考と、入社後の受け入れまでを設計しておく必要があります。本記事では、導入準備の観点から、始める前に整えておきたい5つのことを整理します。
はじめに:通年採用と第二新卒採用は、別の切り口

通年採用は、年間を通じた採用活動の進め方に関わる話です。第二新卒採用は「誰を応募の対象にするか」という対象の話です。よく一緒に語られますが、必ずセットで導入するものではありません。
たとえば、受付の時期は従来どおりのまま、卒業後数年以内の人も応募できるようにする方法があります。反対に、対象は新卒者のままで、エントリーの受付期間だけを広げる方法もあります。どちらを、どの範囲で変えるのかを先に決めておくと、必要な準備も見えやすくなります。
なお、通年で応募を受け付けることは、随時選考や随時入社を意味するわけではありません。受付、選考、入社の時期は、それぞれ別に決めることができます。
また、「第二新卒」をどの範囲の人と考えるかは、企業によって異なります。卒業後の年数や就業経験の扱いなどは自社で定め、募集要項にはっきり示すことが必要です。他社の条件を参考にする場合も、各社の最新の募集要項を確認してください。
1. 採用目的と、任せたい仕事を決める

最初に決めたいのは、「なぜ採用するのか」と「入社後に何を任せるのか」です。欠員の補充なのか、新しい事業の担い手を育てたいのか、将来の管理職候補を早めに確保したいのか。目的によって、適した時期や対象は変わります。
任せたい仕事が具体的になるほど、応募者にも仕事の中身が伝わりやすくなり、入社後のギャップも小さくしやすくなります。前回紹介した富士通の事例でも、応募者が「何をやりたいか」で仕事を選ぶ形への転換が示されていました。規模は違っても、「何を任せるか」を起点にする考え方は、中堅・中小企業でも応用できます。
2. 応募条件と、「今必要な力」「入社後に育てる力」を分ける

次に、応募条件と評価の考え方を整理します。ポイントは、入社時点で欠かせない力と、入社後に育てていく力を分けて書き出すことです。
すべてを入社時点で求めると、条件が厳しくなりすぎて応募が集まりにくくなります。逆に条件があいまいだと、応募は増えても選考で判断に迷い、手間ばかりがかかります。入社後に身につけてもらう力と、そのための育成体制を明確にしておけば、現時点の経験が浅くても、伸びしろのある人材に目を向けやすくなります。
第二新卒の応募者を見る際は、前職の在籍期間が短いことだけで、能力や仕事への姿勢を判断しないよう注意が必要です。退職の理由や、短い期間でも何を経験し、何を学んだのかを丁寧に確認することで、その人の可能性をより正確に捉えられます。学歴や前職での経験も、その価値を軽んじるのではなく、評価の大切な材料の一つとして扱うのがよいでしょう。
3. 選考担当者・評価基準・対応日程を決めておく

通年で応募を受け付ける場合、問い合わせや応募への対応を継続できる体制が必要です。一方、選考は随時行う方法だけでなく、月ごとなど一定の日程にまとめる方法もあります。受付期間、選考日程、入社時期を分けて設計しましょう。
そのうえで、誰が選考を担当するのか、何を基準に評価するのか、応募から何日以内に連絡するのかを、事前に決めておくことが大切です。担当者がその都度変わり、評価の観点がそろっていないと、時期によって合否の判断がぶれやすくなります。面接官どうしで評価項目を共有し、評価シートなどで記録を残しておけば、担当者が替わっても一定の基準で判断できます。
応募者への連絡が遅れると、応募者の印象を損ねることにもなりかねません。対応日程の目安を決めておくことは、採用担当者や現場の負担を見通すうえでも役立ちます。
4. 入社時期に対応できる配属・教育体制を用意する

4月の一斉入社であれば、同期研修や導入教育をまとめて実施できます。しかし入社時期が複数になると、時期ごとに受け入れの準備が必要になります。
配属先の上司や先輩が受け入れの役割を担えるか、最初の数か月で何を身につけてもらうかを、あらかじめ決めておきましょう。研修資料や業務マニュアルを整えておく、入社時期を「4月と10月」のように年数回に絞る、といった工夫で、受け入れの負担を抑えることもできます。
採用は内定で終わりではありません。入社後に力を発揮できる環境があってこそ、採用の意味が生まれます。
5. 採用後に振り返り、基準を見直す

最後に、採用した人材が入社後にどのように力を発揮しているかを定期的に振り返り、採用基準や選考方法を見直す仕組みをつくります。
たとえば、入社半年後や1年後に、配属先の上司と人事担当者が、選考時の評価と入社後の様子を照らし合わせます。「選考で重視した点は、実際の仕事でも生きていたか」「見落としていた点はなかったか」を確認することで、次の採用の精度を高めていけます。
このとき、本人の能力だけに目を向けるのではなく、任せた仕事の難度は適切だったか、指導は十分だったか、配属先の環境に課題はなかったかもあわせて確認することが大切です。うまくいかない原因が受け入れ側にある場合、採用基準だけを変えても改善にはつながりません。
新しい採用方式は、最初から完成された形で始める必要はありません。振り返りを前提に、少しずつ改善していく姿勢が大切です。
人員体制に不安がある場合は、範囲を絞って試す

ここまでの準備をすべて整えるのは、人事担当者が少ない企業にとって簡単ではないでしょう。その場合は、期間や職種、対象を絞って試すことをおすすめします。受付期間を広げる場合も、職種を限定し、選考日は月1回にまとめるといった形であれば、負担を見通しやすくなります。
応募対象の拡大を小さく試す例も挙げておきます。
【想定例】営業職に限り、半年間だけ第二新卒の応募を受け付ける。選考の担当は営業部長と人事担当者の2名に固定し、評価項目も数項目に絞る。入社は10月の1回とし、配属先の先輩1名を指導役とする。 振り返りは2段階で行う。募集が終わった時点で、応募の状況、選考にかかった時間、担当者の負担を確認する。さらに入社後3か月・6か月の時点で、本人と配属先の双方から、仕事への適応状況や育成上の課題を聞き取る。そのうえで、続けるかどうかを判断する。
このように範囲を限定すれば、今の体制のままでも運用の負担を確かめられます。そのうえで続けるかどうかを決めれば、無理のない形で採用の選択肢を広げられます。
なお、採用方式を変えれば必ず良い人材が採れる、あるいは採用コストが下がる、というものではありません。試行の結果を、自社の実績で確かめながら判断することが重要です。
まとめ:窓口を広げる前に、選考と受け入れを設計する

通年採用や第二新卒採用は、採用の機会を広げる選択肢になり得ます。ただし、応募の窓口を広げるだけでは、選考の負担が増えたり、入社後の受け入れが追いつかなかったりするおそれがあります。
採用目的と任せたい仕事、今必要な力と育てる力、選考の担当と基準、受け入れの体制、そして振り返りの仕組み。この5つを整えておくことで、採用の時期や対象を広げても、一貫した基準で人材を迎え入れることができます。
次回は、AIの活用が進むなかで、採用時に確認したい「現在の能力」と「学ぶ力」について考えます。
参考資料
・富士通 採用担当者による公式note「新卒"一括"採用廃止の裏側に迫る!」(2025年5月19日)



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